Bloomberg.comより許可を得て転載しています
Liz McCormick
2017年6月20日 5:00 PM CDT 更新:2017年6月21日 6:08 AM CDT
- エレクトロニック・マーケットメイカーが周辺銘柄取引を拡大
- 顧客ディーラー間市場への進出拡大戦略
シタデル・セキュリティーズが、14兆ドル規模の国債市場において投資家の取引シェア拡大を目指し、世界最大級の銀行との競争を激化させています。
このエレクトロニック・マーケットメイカーは、ディーラー間国債取引において10年以上存在していますが、現在、顧客ディーラー間取引にも深く手を伸ばし、新規参入が困難だとされ、一日の売り上げの半分近くを占めてきたウォール・ストリートの銀行に古くからある砦とも呼ぶべきものを、ぶち壊そうとしています。
株式やスワップなどの資産クラスも扱う同社は、この水曜日にすべての古い国債の投資家向けマーケットメイクを開始し、2月に開始した取り組みを拡大します。シタデル・セキュリティーズの創設者であるKenneth Griffinは、シタデル・ヘッジファンドも立ち上げており国債市場におけるシェア拡大を追求し、1日あたり約5,000億ドルを目指します。金融危機後の規制変更の中で銀行が後退したのを機に、エレクトロニック・マーケットメイカー及び高頻度取引を行うトレーダーは、何年もかけて、ディーラー間ビジネスに進出してきました。しかし、投資家ディーラー間セグメントにまで進出したのは、事実上シタデルだけです。
「日本のメガバンク、ソブリン・ウェルス・ファンド、国内の資産運用会社、ヘッジファンドなどいずれにおいても、複雑な証券全体に関与することなしには、国債においてグローバルな顧客基盤に完全に結び付くことは望めません」と、シカゴを本拠地とするシタデル・セキュリティーズのGlobal Head of Fixed Income, Currencies and CommoditiesであるPaul Hamillは述べています。「私たちは論理的にビジネスを構築しており、すべての周辺銘柄を追加する必要性を常に認識していました」
進出の拡大
同社は昨年の第1四半期、最も活発に取引される最新発行の償還期限付債券であるベンチマーク国債の取引を投資家との間で開始し、顧客ディーラー間市場に参入しました。また今年2月からは、周辺銘柄と言われる既発行証券銘柄の投資家向け仲介も始めました。最近発行された6番目の募集を経由し、非ベンチマーク国債に焦点を当てたものです。トレーダーの多くは、投資判断を下す際に満期までの残存期間の短いものを好むため、今後同社は保有者が変わる頻度が少ない、年数を経たすべての国債を扱う予定です。
「シタデルのような企業は、資本面で大手銀行と競争することはできないかもしれませんが、高度な技術と機敏性でそれを補っています」とリサーチ会社TabbグループLLCのCEO、Anthony Perrotta氏は語ります。一連の資産ヘッジを組み合わせることで、「国債市場において、自分よりもウェイトがはるかに大きい相手に一撃を食らわす力を与える可能性」を秘めています。
シタデルのイニシアチブは、市場における銀行の存在感とその顧客との関係が金融危機後の時代に変化したことがきっかけで生まれました。
バランスシート上の変化
Tabb Groupの調査によると、最大手銀行における国債取引促進のためのバランスシートは、2010年に4,300億ドルであったのに対し、昨年は約3,000億ドルでした。また同時に、多くの顧客ビジネスが少数のディーラーに流れる動きが見られます。Greenwich Associatesのデータによると、上位5社の売買高は2006年の43%から2016年は58%に増加しています。
「当社顧客の周辺銘柄への需要が高まった理由の一部として、流動性の集中が発生したことが挙げられます」とシタデル・セキュリティーズのHead of Treasuries TradingであるMichael de Passは述べています。「機会と顧客の需要が合致した、実に完璧なタイミングでした。当社は少数のプレーヤーに支配されている市場に進出し、市場を改善しようとしています」
シタデルでは、具体的な数字は述べていないものの、国債売買高が前四半期比で2倍に増加したとしています。また新たに約300の機関投資家が顧客に加わったとしています。同社によると、2016年に取引された国債の想定元本は、投資家やディーラーとの取引も含めると5兆ドルに達します。Hamillの予測では、今年はさらに増加すると見ています。
シタデル・セキュリティーズでは、電話注文に加え、ブルームバーグニュースの親会社であるブルームバーグと、トムソンロイター社のトレードウェブの2つの電子プラットフォームを利用している機関投資家に対しても、米国債の流動性を提供しています。電話による同社の約定は、国債の投資家向けマーケットメイキングの約25%を占めると述べています。
水曜日の10年国債利回りは2.15%と、小幅の変動に留まりました。
銀行の拠点
バンク・オブ・アメリカ・コーポレーションの元トレーダーであるMichael de Passが8月に加わって以来、国債のマーケットメイキングを先導するグループは2倍の18名になりました。スタッフには、営業担当者、トレーダー、クオンツ・リサーチャー、技術開発者が含まれています。債券、通貨、商品の全体で、従業員は合計55名です。
他社も周辺銘柄市場参入の機会を認識しています。OpenDoor Trading LLCは、事前設定された時間に買い手と売り手を一致させるオークション形式のサービスを4月に開始しました。
しかし、ディーラー顧客間市場への参入は容易なことではありません。ハードルの一つに、銀行が長年かけて築いてきた、中央銀行やソブリン・ウェルス・ファンドなどの国債の主要な買い手や売り手との関係があります。Tabbグループによると、このセグメントの1日の取引高は2,500億ドル相当に及ぶとのことです。
「顧客ビジネスをゼロから構築することは非常に困難ですが、シタデルは適切な手順を踏んでいるようです」と、Direct Match Holdings Inc.の共同創始者であるJim Greco氏は述べています。Direct Match Holdings Inc.は国債取引会社ですが、市場における銀行の支配力を崩せず、立ち上げに失敗しています。「市場に多くのプレーヤーが存在することは、いつの時代でも好ましいことです。そして、周辺銘柄市場には、流動性プロバイダーに対する大きなニーズがあります」
シタデル・セキュリティーズには、国債に対するもう一つの長期的目標があります。それは最終的にFRBと直接取引ができるプライマリーディーラーの仲間入りをすることですが、達成には数年かかると見られています。
「当社には、国債関連商品セットを構築するためにしなくてはならないことがあります」とHamillは語ります。「そして、プライマリーディーラーと同等のレベルに達した時に初めて、申請プロセスについて考えることができるのです」
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